死刑判決を自ら受けに行きかけた話
彼氏と別れたのは6月後半、そして一か月で悲劇に遭いかけた。
悲劇への序章
6月後半、元カレから別れを切り出された。
それは突然だった。だって数日前に誕生日祝ったばっかりだったし。
結婚にもちょうどいい年齢の女が捨てられたということで、そこまで引きずる人間でもなく、納得できない理由でめちゃくちゃ腹が立っていた私は、その日に早速人生初マッチングアプリをダウンロードした。
滑り出しめちゃくちゃ好評ですぐいいねが沢山来たし、選び放題だった。
そして早く相手を見つけねばと焦っていた。
元カレの顔はそこまでタイプではなかったのだが、周りからはイケメンと言われるくらいの人と付き合ってしまった私は見た目も気にしてしまうようになっていた。
そこで、ある爽やかな男性にいいねをもらった。
年齢は5歳も下であまり年下に興味はないが、とりあえずいいねしとくか爽やかだしという理由でいいねを返した。悲劇の始まり。
早速メッセージが来た。正直メッセージのやり取りはそこまで盛り上がらなかったのだが、会いませんかと言われOKした。会わないとわからないしなぁと思っているタイプだし、なによりSNSでのメッセージのやり取りがすごく苦手だからだ。
出会い
新宿で待ち合わせた。男性は仕事の打ち合わせで少し遅れてきた。
その人を見た瞬間、ん?と思った。
写真はすごく爽やかだったのに、実際は髪をガチガチにセットして、ブルガリのトートバッグを持って、とんがり気味の革靴を履いていた。
ホストみたい、私のタイプじゃない
そう思ったが、見た瞬間帰るのは違うと思ったので、とりあえずお話をしてみようと意思を固めた。その人は慣れているのか初対面なのに馴れ馴れしく
「どこがいいっすか?何食べたいっすか?」
と聞いてきた。おい、こいつめちゃくちゃ軽いぞ!と思いながらも甘いものですかねと答えると
「何がいいですか?ケーキとかなんでもなんか言ってください、おれこの辺のカフェ詳しいんで連れていきますよ」
おい、めっちゃ聞いてきてめんどくさいぞ!と思いましたが、ショートケーキかなと当たり障りのないケーキを言うと、ズンズン歩いてとある喫茶店へ連れていかれた。
とてもいい雰囲気のお店だった。いうなれば、実写版銀魂で使われていたお店みたいな雰囲気(伝わらない)。レトロなお店でどうやら人気店らしかった。
色々な話をした。
好きな動物系YouTuberが同じであったり、金銭感覚が意外と同じであったり、見た目はあれだけど接しやすい青年だったので、どんどん気を許していくようになった。
そこで私はきっと彼にとって最高の言葉を投げかけることになってしまった。
「私、投資に興味があるんですよ。やってみたいと思ってて」
これは本心。本当に投資をやってみようと思っていたし、心を許し始めると個人的なことも話してしまう私はついその言葉を口にしてしまった。
「いい投資ありますよ」
男は田舎から上京してある工場で働いていたが、何かを変えたいと思ってある人に突撃訪問してそしたらその人がその投資を教えてくれて今ではタワマンに住むことを検討できるくらい稼いでいるという話をしてくれた。
ある”なんでも知ってる人”を紹介するからその人に話を聞いてみてはどうかと言われた。
個人的には、投資の話を聞けるものと思っていいかもと思ってしまったのだ。しかも男はそんなに”マルチ感”を出してこなかった。めちゃくちゃ投資の話をするわけでもなく、自分が儲かったとかいう話を推してくるわけでもなく、淡々と「じゃあ今度紹介するわ」みたいなノリであとは普通に世間話をするくらいだった。
悲劇の日
それから数日後、その”なんでも知ってる人”に会う日になった。
同じように新宿待ち合わせで”なんでも知ってる人”の家に歩いて向かった。
途中、とても疑問に感じる出来事があった。
それは、”なんでも知ってる人”に会う前にグーグルの質問をやってほしいと言われたことだった。”なんでも知ってる人”は会社を持っている偉い人だから、会う前にちゃんと自分がどういう人か少しでもわかるように簡単でいいから書いてほしいと言われた。
ただ話を聞くだけと思ってた私は疑問に思いつつも、もう後戻りはできないと思い素直にグーグルの質問に答えた。
「礼儀はしっかりしてね」
と言われた。今となってはめちゃくちゃ失礼な態度とっときゃよかったなと思いもしたが、まあいい。思い出すだけでむかつくけど。
”なんでも知ってる人”の家はタワマンだった。
タワマンに入ったことのない田舎者の私は、初めて踏み入れる地にワクワクだった。(でも正直入ってみたら廊下とかは普通だった)
出迎え用の部屋みたいなところに通された。小さなキッチンのような部分もあったが、タワマンに住んでいるにしてはなかなか年季の入った冷蔵庫に、単機能で安そうな電子レンジが置いてあって意外だなぁと思った。
最初はお決まりの世間話だ。
二人はどこで出会ったの?といったことや(本当は知っていただろう)、私がどういう人間かについて一通り話した後、ついに本題になった。
ここで念を押しておくが、私は「投資の話」を聞きに来た。
そのうえで、”なんでも知ってる人”が話し始めたのは自分が講師を務めるとある社会人向けのスクールだった。
私は内心え?と疑問になりながらあとは”なんでも知ってる人”のペースに流されるがまま、そのスクールについての話を聞いた。
精神論やコミュニケーション論を受講した後、やっと投資の話をしてくれるということだったが、投資の話はあくまで講義の1つでしかなく、最終的には脱サラをすることを目指しているらしい。
長々と話を聞いたが、要はスクールに入ったら全部教えるということ。
ではそのスクールの具体的な値段はいくらか。
コース①:60万
コース②:100万
(値段で何に騙されそうになったかわかる人絶対いる)
高すぎと思った。いやそりゃ高い。しかも色々とオプションがついてるってんで100万のほうをめちゃくちゃ推してくる。それでいて今契約しないとこの先はないみたいなことを言ってきて、今すぐ意思を決めなさいと言われる。雰囲気でも二人からの圧を感じる。
私には100万を払える貯金があった。払っても余裕はある。
さらに投資を続けていれば100万が返ってくると言われた。
今、決めるしかない。
この状況で追い込まれてしまった私は怪しいと思いつつ
「今やるしかないと思うので、契約します」
と言ってしまった。自分に対する死刑宣告。笑
悲劇の手続きと不安
手続きはものすごくスムーズに進んだ。
契約書はホチキス止めされて割としっかりしているタイプで、読み合わせまでしたが、今考えればクーリングオフのところはすっ飛ばされた記憶がある。
支払はどうするかと選択肢を与えられたが与えられなかったようなもので、現金払い+カード払いを選択した。本当は全部現金払いがよかったっぽいが、なぜかそれは怖かったので前者にした。ただ、最終的には搾取されるだけなので一緒と思う。笑
契約が済んで、男と二人だけになったが契約が取れて喜んでいた男は少しテンションが上がっていた。
それからは、まず会員サイトへログインして、現金での支払いをスムーズに進められた。
契約金は100万だが、消費税込みで110万。
私は現金で60万支払い、残りはカード払いにすることにし、早速近くのコンビニで60万を下ろそうとした。しかし、一日に下せる現金は50万だったので、先にタワマンで頭金として払っていた1万と現金50万を足して60万から引いた金額である9万については、明日支払うことにした。現金はその場で男に手渡しした。
上機嫌の男は夜も更けたので送っていくと言い、レンタカーをした。
車が好きだと言っていた私は、レンタルする車を選ばせてもらった。細かいことではあるが、そこで少し気になったことがあった。乗りたい車は二台あって、ジムニーとラブ4でどっちかがいいと男に言った。そしたら男はジムニーは乗ったことがないからとそちらを選んだ。
車を知ってる方ならわかると思うが、私はレンタルの値段を知らないがおそらくジムニーのほうが安い。ジムニーは軽、ラブ4は大きいSUVだ。サイズからして後者の方が高いだろう。
見栄を張りたければラブ4を選んだ方が絶対いいと思うのだが、あえてジムニーを選ぶのがもう契約が済んで信じ切っている私だしいいかと見くびられていた気がしてならない。外車選べばよかった。それかレクサス。
そんなこんなで、最寄りの駅まで送ってもらった。
男は終始嬉しそうで、誕生日にプレゼントあげるよ、とりあえずシャネルのリップでええかと聞かれたが思ったより安いなと思ってしまったことは内緒。
そんだけ金あるならシャネルのバッグにしろや。
車内でもしきりに、今は不安かもしれないが始めたらそんな不安はなくなると言われた。今となっては安心させてとりあえずクーリングオフの期間を乗り越えさせるための言葉だったのだろう。
しかし、生来ケチな私は100万を失ったショックがでかく、男と別れるまではなんとか大丈夫だと自分に言い聞かせていたが、不安を完全に拭いきることはできなかった。でも家に着いたのは夜も遅かったし、明日も仕事だということでその日は床についた。
死刑を免れた女
次の日、見た目はいつも通りに、心は100万を失ってしまったと、さも何もありませんでしたよと言わんばかりの顔で通勤した。
ただ100万を失った傷は思ったよりも大きく、仕事がはかどらない。(そもそもやることがそんなにない)
あれってどうなんだろうなぁとずっと考えていたが、なんだかもやもやが消えなかったので試しに”なんでも知ってる人”の名前をググってみた。
出てきてしまった。
詐欺師やマルチのワード。講師をやっているということだったので、検索すればなにかしらに引っかかるだろうと思っていたがまさかこんなに早くこのもやもやの正体が判明するとは思ってもいなかった。
本当に色々と出てきた。
ツイッターには契約した会社の被害に遭いましたという方々の言葉がずらり。私、これ、やったな?と思いながらもツイッターを漁っていると、こいつもアプリでやってますよ!というツイートとともにインスタの画像が貼られていた。
初日にフォローした男のインスタだった。
私、やりました。
確信した。マルチに引っかかったと。
恥ずかしさと悔しさでいっぱいになりながらも、こういう場合はどうすればよいのだろうと調べていると消費者センターという文字が見えた。その名称こそ聞いたことあれど、もちろん何をしているところかなどの詳細は知らないが、不安でどうしようもなくなってしまった私は仕事を忘れ消費者センターに電話をかけた。
センターの方は丁寧に対応してくれた。
経緯を説明すると、とりあえずクーリングオフできるのであればしたほうが良いということを言われ、いったんは電話を切ったが折り返して電話があった。
経緯を説明したことにより、調べてくれた結果、諸々詐欺罪に当たりそうとのこと。
電話をかけた際は、仕事中であったこと、また昨晩は遅く帰ったためしっかりと契約書を読んでいなかったことでクーリングオフができるかはわからなかったので、センターの方には帰り次第しっかりと契約書を確認し、できるのであればすぐにクーリングオフの申請書を書くようにと言われた。
契約書にクーリングオフのことが書いてあったことは覚えていたので、とりあえずできるのではなかなという淡い期待を抱き、その日の仕事を終えた。
家に帰るなり契約書を確認してみた結果、クーリングオフができるという記載があった。
すぐさま帰り際に購入しておいたハガキに通知書の内容を書いた。
男にはセンターに相談したこと、クーリングオフをすることを一方的に告げてすぐにLINE、インスタをブロックし、アプリには違反報告をした。その後、男との連絡は取っていないがそのLINEを見てどう思ったのかは聞いてみたい。
次の日の昼休みには通知書を簡易書留で送付した。
他にやることがあった気がするが、覚えていなかった私はもう一度センターへ連絡をして、聞いてみるとクーリングオフの対象会社にも電話連絡を入れたほうが良いと言われたので、すぐに電話。
すんなりとわかりましたということになり、自分ができることは全てやった。
次の日、契約担当者である”なんでも知ってる人”から口座番号を教えてもらわないと支払えないのでとなぜか偉そうに連絡がきてイラっとしたが毅然とした態度でLINEをした。既読無視だった。
だが、支払った分のお金は戻ってきた。
戻ってきたお金はすぐさま元の口座に戻し、私の死刑宣告は撤回された。
沢山学んだ気がする今回の死刑宣告
こんな経緯で私は死刑宣告を受けいれかけた。
どう考えても自分の認識の甘さと騙されやすい人間性が招いた死刑宣告ではあったが、なんとか回避できてほっとする反面、こうやって騙されていくんだ、お金をむしり取られていくんだと非常に勉強になった。
たまたまツイッターで救われたため、自分でも少しでも救いになればと専用のツイッターアカウントを作成し、既に数人の相談を受けた。(ここでは公表しませんが、調べればそのうち出てくるかも)
こうやって救われる人もいればお金を取り戻せない人もいる。
何事もしっかりと自分の目で見て、納得するまで調べてみることが大事である。
皮肉にも、元カレと別れるとき「悪い奴にだまされるなよ」と言われたばかりだった。(めちゃくちゃ騙されやすい)まさかこんなすぐに騙されかけるなんて夢にも思っていなかった。
きっと同じような経験をして悩んでいる方がいると思う。
まずは冷静に、この世には簡単にお金を稼ぐことができる方法などないとしっかりと理解し、コツコツと稼ぐことを考える。
投資ならば、政府がOKを出しているつみたてNISAなどの公的なものを利用する。
不安であればすぐに相談する。
これからの社会、SNSから始まる人間関係が多いのではないかと思うので、本当に皆さん気を付けてください。
私も気を付けます。。。